俺を、汚れている俺を見ないでくれ!お前だけには見られたくないんだ!
『エロティクス・インサイド』
つゆきゆるこ/著、竹書房/出版
☆☆☆読んでみました☆☆☆
個性的な表紙ですね。思わず手に取ってしまいました。絵が、なんとなく中村明日美子さんの絵に似ているような似ていないような。話も個性的かもしれません。
☆☆☆どんなお話なのかしら?☆☆☆
『エロテックス・インサイド』より引用
上影森は、いつもニコニコして誰にでも優しい優等生です。そんな上影森のことを胡散臭い奴と思っているのは、髪の毛をそめたヤンキーの唐竹なのですが、この唐竹が、屋上でタバコを吸っている上影森を目撃してしまうのです。
唐竹君に煙草を吸っているのを見られた上影森は、チェッと舌打ちをして、普段他の人には見せないような悪態をつきます。
唐竹としては、今までの胡散臭い上影森よりも悪態をつく方が人間味があって、興味深く感じます。そして唐竹は見た目ヤンキーなのに根は真面目なので、上影森に煙草は止めなよ、と注意してくるのです。
そんな唐竹に近寄るなと声を荒げる上影森です。しかし上影森に興味を持った唐竹は、上影森に「トモダチになろう」と言って、上影森に益々近づいてきます。それが鬱陶しい上影森は、自分の家へ呼んで、ジュースにお酒を混ぜたのを唐竹に飲ませて、酔ったろころにいたずらをします。もう自分に近づいてこないように。
それなのに…、それにも関わらず唐竹は、上影森にお弁当を作っていたたりと仲良くしようとするのです。そんな毎日が続くと、上影森も前のようなバリアを張ることもなく、唐竹のことに好意を持つようになってきます。
しかし、そんな中、静かに暗い影が忍び寄ってきます。上影森は中学時代、虐められていました。いじめっ子のリーダーに犯されて、その時の動画を撮られていたのでした。そのいじめはリーダーが父親の転勤に伴って外国に行ったことにより終わりを告げたのですが、上影森は今でもその時のことを夢に見ます。
その時のことがあるら、唐竹に好意を持ち始めても、心から唐竹に打ち解けることができないのです。そして、なんの運命でしょうか。いじめっ子のリーダーの道生が外国から帰国して、上影森の高校へ転校してくるのです。
上影森は動画を唐竹に見せるぞと道生に脅されて、唐竹と仲良くすることを止められます。それでも自分の気持ちを止められない唐竹は、道生と対決するのです。その時に、上影森の動画を見せられまが、唐竹は動揺している上影森を強く抱きしめます。
このあたり、いいんですよね。抱きしめることによって、気持ちが強くなっていく。そして自分の本当の気持ちを自覚していく…という感じですかね。
愛は人を強くします。上影森は唐竹のことを好きになったことによって、人間的に強くなっていきます。道生に今までのように脅されても、屈しない精神力ができました。
道生は上影森を変えてしまった唐竹のことが憎くてたまりません。唐竹さえいなくなればと唐竹に攻撃をしようとします。しかし、攻撃の寸前にいつも邪魔が入ります。それが唐竹の幼馴染の和ケ原です。なにげにこの二人の掛け合いが面白くて、どうなるんだろうと思っていたら…。
上影森と唐竹は収まるところに収まったので、今度は道生と和ケ原の二人の話しが読みたいな、と思ってしまいました。脇キャラの道生と和ケ原ですが、何気にこの二人の話の方が面白かったりしました。
和ケ原にドロドロに甘やかされる道生が見たいと思っているのは私だけないはずだと思っています。
☆☆☆エロ度はどうなのかしら?☆☆☆
『エロテックス・インサイド』より引用
Hシーンはそんなに多くはないですが、身体の線とかがなかなかエロチックですね。
題名にも「エロティックス」と入っていますが、う~ん、題名から期待すると、少し期待外れかもしれません。それほどHシーンが多くないような。でも、適度なHシーンとも言えますね。Hシーンばかり多くて内容がない作品も多いですが、この作品はきちんと内容もあってのHシーンなので、なかなか良いのではないでしょうか。
脇キャラに思い入れのある私ですが、Hも主人公二人のものよりも、道生と和ケ原のHがなかなかでした。
☆☆☆よんでみた感想は?☆☆☆
内容もHもなかなか満足する作品でした。ただ、前半の全体に漂う何かあるな、という暗い内容が少し重たく感じました。
私があまり暗いとか重い内容のものが苦手なので、上影森の過去のあたりなどが、少し辛かったですね。上影森自身辛い過去なのですが、その辛さが唐竹によって癒されていくことを切に願っています。